ギャグ系ではなくストーリー漫画を最初に読んだのは、石ノ森章太郎氏(当時は石森章太郎)の「サイボーグ009」です。小5の夏休み、当時サンデーコミックスから発売されていた全10巻を友人の姉に貸してもらい、3日くらいかかって全巻を読みました。

主人公である島村ジョーが、悪の秘密結社「ブラックゴースト」にサイボーグ戦士としての改造手術を施され、サイボーグ009として誕生します。その後、00ナンバーサイボーグの仲間8人と共に「ブラックゴースト」を裏切り、世界平和のため「ブラックゴースト」を始めとする悪と戦うストーリーです。同じ石ノ森氏の作品である後の「仮面ライダー」の誕生を彷彿とさせます。
この作品の魅力は、主人公「009」こと島村ジョーを取り巻く、個性豊かな8人のサイボーグ戦士たちの設定です。8人の戦士たちは、それぞれ国籍や民族が異なり、サイボーグとして与えられた能力も一人ひとり違います。
物語の中では、これまでの境遇や改造人間としての苦悩を抱えながらも、戦士9人の力を結集して圧倒的な戦力差の敵に対峙していく姿が何度も描かれています。
9人のサイボーグ戦士のキャラクター設定は、次のとおりです。
| 名前等 | 国籍等 | 改造で付加された能力 |
| 001:イワン・ウィスキー 赤ん坊 | ロシア | 天才頭脳を持ち、超能力を使う。 |
| 002:ジェット・リンク 不良少年 | アメリカ | 飛行能力により空を飛ぶ。「加速装置」も装備されている。 |
| 003:フランソワーズ・アルヌール バレリーナ | フランス | 人間の能力をはるかに超えた「視聴覚能力」。女性キャラ。 |
| 004:アルベルト・ハインリヒ 東ドイツ脱出失敗で恋人を死なせる | 東ドイツ | 手が機関銃、膝からミサイルと全身に武器が埋め込まれる。 |
| 005:ジェロニモ・ジュニア ネイティブアメリカン | アメリカ | 巨漢で怪力。 |
| 006:張々湖 貧しい年配の農民 | 中国 | 口から火炎を吐く。土の中にもぐれる。 |
| 007:グレート・ブリテン 売れない元俳優 | イギリス | 細胞を変化させ、あらゆるものに変身、変装できる。 |
| 008:ピュンマ 奴隷として捕獲されそうになる | アフリカ 国籍不明 | 水中で呼吸ができ、深海でも活動できる。 |
| 009:島村ジョー 混血児 | 日本 | 「加速装置」で人間の目には見えないスピードで移動できる。 |
この作品が発表された1964年は、日本では東京オリンピックの開催、東海道新幹線開業と戦後復興を象徴する出来事があった年ですが、世界的に見れば1962年の「キューバ危機」による核戦争の恐怖が現実化し、米ソによる軍拡・宇宙開発競争が激化していた時代です。
こうした時代背景を踏まえ、「死の商人」と呼ばれる武器商人を象徴する「ブラックゴースト」がサイボーグ戦士たちの敵として設定されています。昨今囁かれている陰謀論を見通していたかのような感があります。
この作品の中でご紹介したいのが、1960年から1975年にかけて戦闘が続いた「ベトナム戦争」を扱った「泥と血」から「夜明け前」までの4部です。
第二次世界大戦の終結直前の1945年2月から1989年12月までの44年間続いた「東西冷戦」の時代、資本主義と共産主義というイデオロギーの対立から、ベトナムをはじめドイツや朝鮮半島に分断国家が誕生しました。
その分断国家の一つであるベトナムを舞台に、ベトナム戦争の裏で暗躍するブラックゴーストのサイボーグマン達と、その野望を阻止しようとする00ナンバーサイボーグ達との物語が、農民出身のベトコンを取り巻く戦争の悲劇を交え、見事に描かれています。
最近の漫画に慣れた方には、多少コマ割りや絵の古さは感じるかもしれませんが、登場人物の台詞まわしやスピード感のあるリアルなストーリー展開は、今読み返しても新鮮で飽きさせない魅力を持っています。

この作品の魅力として、二つ目にあげたいのは、SFのネタの多さです。
そのひとつとして地底世界を扱った「地下帝国ヨミ」の話があります。「地球空洞説」とはやや設定が違いますが、地下の大トンネルにレプテリアンまがいの知的爬虫類「ザッタン」が支配する地底世界が存在し、そこでは人間がザッタンの食用にされていたり、太古に滅びたはずのプテラノドンなどがまだ生息しています。
その他にもマッドサイエンティストにより巨大化させられた巨人達が登場する話、核戦争後の世界から未来人がUFOに乗って現代にやってくる話、海底都市に住む海底人や海中を航行する戦艦が登場する話など、SFの要素が満載され、SF漫画の教科書のような作品と言えます。
最後にこの作品最大の魅力と言える「天使編」を紹介したいと思います。
ある意味タブーともいえる「神」を扱った話で、余りにも壮大なテーマであるためか、10巻の途中で未完に終わっています。石ノ森氏が巻末で、「天使編」はこの作品の総決算であり、近いうちに何らかの形で続編を発表すると書いていたので、当時いつ続編が出るのかと心待ちにしていました。
中断した「天使編」描き改めた「神々との闘い編」が「COM]に掲載されたことを最近知りましたが、私はまだ読んでいません。

私が所有している秋田書店刊のサンデーコミックス「サイボーグ009」は、1966年から1977年までに発売された12巻までで、その後の発売となった13巻から15巻までは読んでいません。
11巻、12巻は「天使編」とは別のストーリー展開で、神話や古代文明などを扱った話になっています。その後小学館から発売となった「少年サンデーコミックス」の1から4巻も所有していますが、こちらも新たな世界観での話になっており、「神々との闘い編」はもとより未読の話を読むのには、中古本を探すか、現在発売されているデジタル版を読むしかないのかもしれません。
ダメもとで秋田書店刊のサンデーコミックス「サイボーグ009」の13巻~15巻をネットで検索したら、ヨドバシ・ドット・コムで新品の単行本が発売されていたのでそれを購入しました。
さらに「神々との闘い編」についても、Amazonで文庫版21巻を見つけ購入することができました。
これらを読んだ感想については、また別の機会に述べさせていただこうと思います。


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